第1章

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北斗に跨った博雅が、 承明門を抜け、 建礼門を出る。 走り出してまもなく馬の様子が変わった。 息が浅く荒くなり、 瞳に怯えた色が混じる。 「北斗、 案ずるな」 博雅が腕を伸ばして首を撫でる。 朱雀大路を走り抜けて、 羅城門を出た時に。 ふっと、 後ろから腰にひやりとした手がまわされた。 無骨な男の手。 指に細い銀の輪が光る。 「……誰ぞ?」 怯える風もなく、 博雅が前を見たまま問い掛ける。 ……鞍作りの馬飽(マーパオ)、 とかそけき声がする。 「まあぱお?」 異国の人か、 と博雅が思う。 「私は、 博雅」 ……ひろまさ、 とうっそり呟く声。
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