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北斗に跨った博雅が、
承明門を抜け、
建礼門を出る。
走り出してまもなく馬の様子が変わった。
息が浅く荒くなり、
瞳に怯えた色が混じる。
「北斗、
案ずるな」
博雅が腕を伸ばして首を撫でる。
朱雀大路を走り抜けて、
羅城門を出た時に。
ふっと、
後ろから腰にひやりとした手がまわされた。
無骨な男の手。
指に細い銀の輪が光る。
「……誰ぞ?」
怯える風もなく、
博雅が前を見たまま問い掛ける。
……鞍作りの馬飽(マーパオ)、
とかそけき声がする。
「まあぱお?」
異国の人か、
と博雅が思う。
「私は、
博雅」
……ひろまさ、
とうっそり呟く声。
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