第1章

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「なぜこの鞍に憑いておる、 馬飽?なぜ親王をとり殺す?」 馬を走らせたまま、 博雅が背中に問いかける。 ……わが愛馬を奪うものは許さぬ。 「笑止。 北斗はわが馬なり」 馬が怯えて嘶くのを、 博雅が宥める。 ……われを殺したな。 軋るような声がした。 途端に腰に回った腕が恐ろしく重くなった。 どっと冷気が染み込んでくる。 じわじわとその腕が上がり、 博雅の胸から首へと這い登っていく。 「……ッ!」 不意に冷たい掌でその目を覆われた。 驚愕の叫びを呑み込んだ博雅が、 反射的に引こうとした手綱を意識的に緩めた。 突然目の前に暮れなずむ草原が広がった。
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