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「なぜこの鞍に憑いておる、
馬飽?なぜ親王をとり殺す?」
馬を走らせたまま、
博雅が背中に問いかける。
……わが愛馬を奪うものは許さぬ。
「笑止。
北斗はわが馬なり」
馬が怯えて嘶くのを、
博雅が宥める。
……われを殺したな。
軋るような声がした。
途端に腰に回った腕が恐ろしく重くなった。
どっと冷気が染み込んでくる。
じわじわとその腕が上がり、
博雅の胸から首へと這い登っていく。
「……ッ!」
不意に冷たい掌でその目を覆われた。
驚愕の叫びを呑み込んだ博雅が、
反射的に引こうとした手綱を意識的に緩めた。
突然目の前に暮れなずむ草原が広がった。
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