第1章

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どこまでも続く草の海を、 馬と一体になって走っている自分がいる。 そのすぐ後ろを別の馬が走っている。 ひどく懐かしく慕わしい誰か……。 と、 風の向きが変わり、 物の燃える異臭が鼻をついた。 はっと見上げる夕空に昇る黒煙。 ……兄者ッ! 背後で叫び声が上がる。 馬の前に、 ばらばらと鎧を付けた兵士が飛び出てくる。 ……馬と鞍を奪えッ! 突き出された槍に脇腹を突かれる。 激しい痛みに息が止まる。 どうっとばかりに地面に引き倒されて。 これは自分の見ている風景ではないと博雅は気づいたが、 もはや感覚が同調してしまっていた。 嘶く愛馬が連れ去られる。 霞む目で見上げれば、 空を覆う真っ黒な煙。 村が、 焼かれている。
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