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「晴明!」
殿上の間の入り口から彼を呼ぶ声がした。
見れば源博雅(ひろまさ)だ。
冠から覗く黒鳶色の髪が黒い束帯の姿を優しげに見せている。
近寄って覗き込めば 、
その瞳も少し色素が薄い鳶色だ。
博雅様だわ、
と声が高まる。
「あの方にまでお目にかかれようとは、
今日はなんと良い日でしょう」
「しっ、
うるさくてよ」
晴明とは異なって、
博雅は生まれも育ちも尊い血筋。
あだや女官の噂話などを耳に入れていい御人ではない。
博雅が歩んでくると途端に声がひそまった。
「帝のお召しか?」
「まあな」
息を潜めながらもこちらをしっかりと伺っている女官達の気配に、
晴明がにやりと人の悪い笑みを浮かべた。
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