第1章

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「……博雅」 声を落として呼びかける。 「何だ?」 晴明の漆黒の瞳に悪戯っぽい光が宿っているのにも気づかずに、 博雅が顔を近づける。 内緒話でもするかのように、 晴明がすいと耳元に唇を寄せた。 窓の向こうが一瞬静まる。 ―――耳朶に、 ふっと息を吹きかけられて。 「……なっ」 首筋まで真っ赤になった博雅が、 耳を押さえて後ろに飛び退る。 晴明ッ!と怒鳴ろうとした声を、 きゃあああぁっという窓越しの叫びに遮られた。 「まあ、 あれ、 あのように!」 「なんと目の保養!」 きゃあきゃあと身悶えて喜ぶ女官達の声に、 窓を見上げた博雅が呆気にとられる。
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