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「……博雅」
声を落として呼びかける。
「何だ?」
晴明の漆黒の瞳に悪戯っぽい光が宿っているのにも気づかずに、
博雅が顔を近づける。
内緒話でもするかのように、
晴明がすいと耳元に唇を寄せた。
窓の向こうが一瞬静まる。
―――耳朶に、
ふっと息を吹きかけられて。
「……なっ」
首筋まで真っ赤になった博雅が、
耳を押さえて後ろに飛び退る。
晴明ッ!と怒鳴ろうとした声を、
きゃあああぁっという窓越しの叫びに遮られた。
「まあ、
あれ、
あのように!」
「なんと目の保養!」
きゃあきゃあと身悶えて喜ぶ女官達の声に、
窓を見上げた博雅が呆気にとられる。
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