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追いついて横に並んだ博雅が小声で文句を言う。
まだ赤いその顔を横目で見て、
晴明がくすりと笑う。
「ゴミ、
ついてたんだよ」
真面目な顔でさらりと言ってのけられて、
博雅が何も言えなくなった。
さて、
帝の御前。
孫庇(まごひさ)しに控えた公卿の一人が説明するには、
唐渡りの馬の鞍に変事があるという。
運ばれてきた長持の中から取り出されたのは、
木製の古びた鞍。
年月を経て飴色になった木肌、
くすんではいるものの手の込んだ銀の飾りがついていた。
一目見た晴明の瞳が細められる。
「親王が宝物倉の中からこの鞍を見つけられての。
お乗りになりたいと申されたのじゃ」
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