第1章

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追いついて横に並んだ博雅が小声で文句を言う。 まだ赤いその顔を横目で見て、 晴明がくすりと笑う。 「ゴミ、 ついてたんだよ」 真面目な顔でさらりと言ってのけられて、 博雅が何も言えなくなった。 さて、 帝の御前。 孫庇(まごひさ)しに控えた公卿の一人が説明するには、 唐渡りの馬の鞍に変事があるという。 運ばれてきた長持の中から取り出されたのは、 木製の古びた鞍。 年月を経て飴色になった木肌、 くすんではいるものの手の込んだ銀の飾りがついていた。 一目見た晴明の瞳が細められる。 「親王が宝物倉の中からこの鞍を見つけられての。 お乗りになりたいと申されたのじゃ」
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