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豪胆で名を売る親王だ。
何を下らぬことをと、
笑い飛ばして鞍に跨った。
ひゅんとばかりに飛び出した馬は手綱を引いても止まるものではない。
泡を吹いて走りつづけた。
親王の手綱使いが巧みなのが、
かえって仇となった。
ようよう自ら止まった馬に雑色達が近づいてみると、
馬の背に伏した親王は虫の息。
そのままどっと床に臥してしまった。
「親王を助けられぬか」
御簾越しのやんごとなき声に、
控える殿上人が平伏する。
「失礼」
進み出た晴明が、
長持ちと鞍に手を触れる。
長持ちには剥がされた札の跡があった。
「この鞍、
封じられていたのではありませぬか?」
「親王自らお開けになったとの事じゃ」
公卿の答えに晴明の眉が寄せられた。
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