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つらつらと、そんなことを考えながら歩くうちに、お目当ての大学が見えてきた。
ポスト・モダニズム様式を用いた校舎は、近代的だが曲線の美しいディテールで、侘び寂びの利いた学園都市内では少々浮いて見える。
けれども俺は、眼前にひろがるスタイリッシュな校舎を眺めると、途端に胸が高鳴り浮き立ってしまった。先程までのアウェイ感なんてどこ吹く風か、嬉々としてキャンパスへと飛び込んだ。
「うぉーッ! すっげえ」
周りのやつらが、俺の上げた声に驚き注視してくるが、感動しまくってる俺はそんなこと気づきもしなかった。だけどもそんな俺に、声をかけてくるやつがひとりいやがった。
「おい深雪、ンなトコで大声あげてんじゃねえよ。まったく恥ずかしい野郎だな」
「んあッ!? 誰や、俺にケチつけとんやつは――……って、あれおまえ……和哉!?」
「よお、久しぶりだな。元気にして……るよな、その調子じゃ」
ふり返った先に立っていたのは、ことごとく俺を無視してくれた野郎――葉山 和哉だったんだ。けどいったい、どうしてこいつがこんな場所に……。
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