60人が本棚に入れています
本棚に追加
◇ ◇
「それでさ……どうしておまえが、こんなトコいんだよ」
「そりゃ俺も、この大学に入ったからに決まってるだろ。他に大学に来る理由なんてあるか?」
「なッ……まあ、そうだけどよ」
ンな事が訊きたい訳じゃねえよ。
喉許まで出かかった文句をすんでで呑み込むと、俺は大きなため息をひとつつき、質問を変えてやつにぶつけた。
「じゃあよ、何で今さら俺なんかに声かけてるわけ? つか俺の顔なんて、見たくなかったんじゃねえのかよ。言ったよな、おまえ。もう俺には近づくなって」
そうだ、こいつに言われた事は、一言一句すべて覚えている。それは言葉の刃となって、俺の深い場所へと未だ突き刺さったままだ。
こいつ――葉山 和哉は、俺の親友だったんだ。
高校で知り合って直ぐに、俺たちは意気投合した。それから俺らは毎日、飽きる事なくツルんでたんだ。それがどうしてか、急にこいつは俺から距離を取り始めた。
最初の頃は俺の勘違いかとも思ったが、けどそれが何度もつづけば、いくら馬鹿でも気づくに決まっている。
最初のコメントを投稿しよう!