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「予定はないんだろ? ならいいじゃねえか」
「よくねえよ!」
俺を暇人みたいに言いやがって。
とは言え……こいつの言うように、予定なんてモンは無いけどさ。それでも素直に認めるなんて癪だ、イラつくままに俺は、和哉の言葉に反論した。
「まあ聴けって。俺さ、上京して今は兄貴ん家に居候してるんだ。まえに話した事あったろ、俺の兄貴って菓子つくんのが上手いって。
それでさ、製菓学校を卒業して、今こっちのパティスリーで働いてんだ」
確かに以前、そんな話してたな。でもそれと俺の予定に、何の関係があるって言うんだ。だんだんムカついてきた俺は、半ばキレ気味に要点を求めた。
「それが、どないしたっつーねん! ンなモン、俺と何の関係があるんや、ボケが」
「だからおまえ、声が大きいって。それに地が出てンぞ。いいのか、関西弁なんてベタに使って」
「ぐッ……いいから、さっさと要件を言え」
眥裂髮指(しれつはっし)の余り、俺は我を忘れて地元の言葉で怒鳴っていた。何とかクールダウンしようと、和哉に気づかれないよう小さな深呼吸をくり返す。
しかし何でこいつは、無駄に流暢な言葉づかいなんだ? 必死になってレッスンした俺よりも、よっぽど違和感がないじゃないか。
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