田上くんは屋上少女を救いたい

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学校の屋上って聞くと何を思い浮かべるだろうか。 青春のテンプレートというイメージを持つ人もいれば、単純に危険な場所だと答える人もいるだろう。 しかし俺にとってその場所は、もはやそんな生ぬるい場所ではなくなっていた。 その理由はもちろん、今俺の目の前で起こっている出来事に起因する。 「あの…つかぬ事をお聞きしますけど…。何をされているんですか?」 目の前にいる女に声をかける。 その女は確かに目の前にいる。 だけど、近くにはいない。 「見てわからない?」 よく晴れたまさしく秋晴れと言わんばかりの晴天の中、彼女は防災用のネットの「向こう側」でとぼけた顔をした。 かわいらしい。それが彼女に抱いた最初の印象だった。クリクリっとした大きな瞳と、首にまで届くか届かないくらいの若干茶色がかった髪の毛が若々しさを強調しているような、そんな見た目。うちの高校指定のブレザーがよく似合うと感じた女子もこの娘が初めてだった。 しかし、今はそんなことを考えている場合ではないということは誰が見ても一目瞭然だった。 「日向ぼっこ…ってわけではなさそうですね。」 「そりゃあね。」 彼女の顔は冷静そのものだ。対する俺は平静を装ってはいるものの、心の中はもちろん平静ではない。今までそんなに長く生きてきたわけではないが、浅い人生経験の中では少なくとも一番焦燥を感じる瞬間だった。 「あの…とりあえずこっち戻って話しませんか?」 刺激しないよう、なるべく優しい声色で声をかける。 しかし、ネットの向こう側にいる彼女は取り澄ましたような顔をそのままにして少しだけ考えるポーズをとった。 そして、数秒間経ってから言った。 「う~ん…。また戻るのも面倒だからここで。」 だめだ。これはダメなやつだ。
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