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「生きてれば…いいこともありますよ?」
逆効果かとも思ったが思い切ってそう声をかけてみた。他に何かうまい言い方があるんじゃないかとも思ったが、何度も言うが俺の浅い人生経験の中で、そうそううまい言葉が思いつくものではない。
「ははは。そうかもね。でも、もういいんだ。」
「なんでだよ。」
「いきなりタメ口になったね。」
「まだ君が年上か年下かわからない。」
焦りから若干早口になる俺を嘲笑うかのように彼女は口角をあげる。
「ははは。私知ってるよ。あなた、田上正志くんでしょ3年の。あたし2年A組の倉敷春香。よろしくね。」
後輩だった。しかも俺を先輩だと知ってのタメ口。最近引退するまで上下関係に厳しい部活に所属していた俺にとってはなんとも違和感だらけの接し方だ。
しかし何度でも言う。
今はそれどころではない。
「てなわけで。もういいかな?飛び降りても。」
「いや、よくないよ。」
「そりゃまあ目の前で人が飛び降りたら夢見が悪いわよね。それじゃあ特別サービス!今から5分間だけ待ったげる。」
彼女は相変わらずの平静な表情でそう言うと「あははムスカ大佐みたいだね。」とどうでもいい独り言を漏らした。
そんな彼女の様子を見ながらも俺は必死に考えようとする。一つとはいえ俺よりも年下の女の子が、どうしてこうも死にたがるのか。
しかしその心境が、今まで平々凡々と育ってきた俺にはどうしても理解ができなかった。
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