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第6章 イエロー
長かったように思えた暑さの中に、
昼間も、ひっそりと涼風が立つようになってきた。
しかし、そんな過ごし易くなってきた陽気の中。
出遅れてきたツクツクホウシの寂しげな声を耳にしつつ、
私は、手にしていたペーパーバックをポンと仕事机に放り出す。
「ダメだなぁ……」
私は、立ち上がると大きく伸びをして、少し窓の外を覗いた。
時刻は、午後の二時過ぎ。気分転換に散歩に出ようか。
だが多少涼風も立つとはいえ、この眩い日差しだ。
「コーヒーにしよう」
まぁ、日焼け止め塗るのも面倒だしね。
小さく言い訳を呟く私を怪訝そうに眺める瀧嶋の頭を撫で、
キッチンへと出て行く。
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