第6章  イエロー

1/37
前へ
/38ページ
次へ

第6章  イエロー

長かったように思えた暑さの中に、 昼間も、ひっそりと涼風が立つようになってきた。 しかし、そんな過ごし易くなってきた陽気の中。 出遅れてきたツクツクホウシの寂しげな声を耳にしつつ、 私は、手にしていたペーパーバックをポンと仕事机に放り出す。 「ダメだなぁ……」 私は、立ち上がると大きく伸びをして、少し窓の外を覗いた。 時刻は、午後の二時過ぎ。気分転換に散歩に出ようか。 だが多少涼風も立つとはいえ、この眩い日差しだ。 「コーヒーにしよう」 まぁ、日焼け止め塗るのも面倒だしね。 小さく言い訳を呟く私を怪訝そうに眺める瀧嶋の頭を撫で、 キッチンへと出て行く。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加