第6章  イエロー

11/37
前へ
/38ページ
次へ
しかしそれで遡った歳月に、私は、いささか愕然とする。 思い至ったのは、なんと七年も前のこと。 二つ年下の医者。 珍しく体調を崩して二週間ほど入院をした、あの頃。 主治医と患者という出会いが始まりだった。 そして退院後、三ヶ月程度の通院を経て付き合いが始まった。 しかし、一年ももたずに解消。しかも、その原因は「結婚」だった。 当時の私の結婚観は、今とは少しだけ違っていた。 しかし結局、その二文字を言葉にされた時、 私は、咄嗟に仕事を盾に首を振った。 体を壊すほどのストレスを抱えるのに、なぜ?  どこまでも優しく、忠実な大型犬のように真っ直ぐな目を向け、 必死さを浮かべて尋ねられる。 そして確かに私は、彼のこの疑りとは無縁の純粋さに惹かれた。 だが、最後はその真っ直ぐすぎる彼の気持ちが少し重く、 その先に待っている「結婚」という現実が怖くなった。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加