第6章  イエロー

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「今度の金曜日、空いてる?」 「えっ? 金曜日?」 週末の混雑を避けるため、わざわざ休暇を取るというのだ。 「本当は先週末にって思ったんだけど、どうせならゆっくり行きたいからさ。 先週は、仕事のほうを頑張ったんだ」 なるほど。彼の事情は、分かった。 だが正直、その頃の私の心境は少しだけ変わっていた。 というか、何かが冷めていた。 だから、この誘いに浮き立つような嬉しさは、感じない。 しかし一方で、まだスランプから抜けられていないのもまた事実で、 至極ありがたい気分転換の誘いには違いなかった。 だが、こんな些細な私の中の変化など露知らぬ彼は、 この日の始まりに小さなブーケを手渡してきた。
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