第6章  イエロー

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「俺の腰に捉まって、左右のバランスは俺の体に合わせるように 自然にしてればいいから。 ただ、膝だけは俺から離さないように、しっかりくっ付けててね」 乗る時に、銀色のヘルメットを渡されながら、にこやかに説明された。 それでも最初は、慣れないバイクという乗り物に多少戸惑った。 しかし彼も、そんな私を気遣いながら走ってくれているのだろう。 徐々に、その乗り心地にも慣れて来ると、 この穏やかで美しい初秋の景色を彼の背後で楽しみながら、 時折、ぼんやりとこの前の自分の思考を頭の中に巡らせ始める。 私、本当に彼の事が好きになっているのかな? もちろん嫌いなわけではないし、時折、会いたいと思う存在には違いない。 だが、こうして時々二人で会うようになった今でも、 四六時中、彼のことで頭がいっぱいになることはない。
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