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聞き取れるかどうかの、弱弱しい声が、最後の力を振り絞るように、紡ぎだされる。
じいちゃんが寝かされたベッドの周りに集まった俺たち家族は、耳を寄せて震える声に耳を澄ました。
「・・・た・ちばなやの・・うな重、・・玉・寿司の・かん・・ぴょうまき、せい・・わあんの・・ざる・・そ・・・ば、ききょう・・や・の…湯豆腐、しゅん・・ぷう・の・・・し・・・お・ラーメン、じゅんわ・・ど・・・う・・の水ようか・・ん、フルールの・・い・ちご・・タルト、いち・・ばんや・・・の・いまがわ・・・や・・き、・・あぁ、・・・うまかった」
満足そうな吐息をひとつ。
「ご臨終です」
じいちゃんの食道楽に苦労したばあちゃんのこめかみに、ピシリっと青筋がたった。
じいちゃん、最期は感謝の言葉のひとつくらい残していけよ・・・
完
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