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 とても空は高く全てを覆うように美しく広がる青に吸い込まれるような感覚を気持ちよく感じていた。そこに一つ揺蕩う白が不釣り合いなほど青い。きっと幸せな日々が永久に続くと信じられるようなそんな日だった。  八尋様のご実家の庭先で欠伸を噛みお腹を撫で、ふと右手を見つめ癖になってしまったと微笑んだ時、ついに始まった。 「八尋様……」  駆け付けた小若に支えられ布団に横になった。  腹を引き裂かれるような、いや、内側から殴り続けられるような、一瞬痛みは和らぎまた繰り返す、それにただ耐える時間がもう何時間になるのか。生殺しのような痛みに額に汗が浮かび目には自然と涙が溢れる。 「千晴殿、すまない。私が変われるのならと願わない刻はないのに、私には何もできないなんて」  俺の顔を心配そうに見つめ涙を浮かべる八尋様を見ればあまりの情けなさに痛みも和らいでしまう。口元が緩むと八尋様は涙を落とした。 「千尋を見てから泣いて頂きたいのに、早すぎますよ」  とても気持ちのいい日だったんだ。新しい家族の誕生に幸せ以外の涙なんて似合わないのに、と言いたくても痛みから言葉も発せず、ただ時間の流れに身を任せ出てくるまで耐える。  ベータでいたら味わうことの決してなかった痛みは想像を遥か越え命の誕生の難しさを教え、もう会うことのない母の顔が浮かんだ。痛みと共に産まれ愛情を持って育てた俺がオメガになり、今、母になろうとしていると知れば 貴女は何を思いますか?忌み嫌うオメガへの偏見はまだベータからは無くならず年を重ねた人ほど根強く蔓延る。 「んんんーーーーー」  きつく目を閉じ悶え苦しむ俺の背中を撫でていた八尋様はおろおろと水をすすめる。 「目を開けて息をしてください」 「出てください!お願いだから、きちんとするから、出て……」  痛がりぼろぼろになる姿は見せたくない、そんな意地を捨てられず、肩を落とし産婆さんに外へと促される姿を確認してから、渾身の力を込めた。  痛い、いたい、悲鳴を上げたくなるも、外にいる八尋様を心配させたくなく音にしないよう荒く息をしシーツを掴む。押し寄せる激痛が何度めか分からなくなった頃、弱々しい泣き声を耳に意識は途切れ闇に包まれた。  後に聞けば目を覚ましたときには8日が過ぎていたらしい。 「もう目を覚まさないのかと……」
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