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 この国の人を人種で分けるなら3つだろう。人類95%を占めるベータと残り5%内、半分が世界を牽引する力を持つアルファと生産するしか力の無いオメガ。  オメガは男であれアルファのみと子を成せる。数ヵ月に一度一週間の発情期のみに孕むが運命の番でなければ強いアルファは生まれない。その為アルファは運命の番を渇望し力の無いオメガは身を守るためより強いアルファを求める。  力のあるアルファは人類の憧れであり誇りだ。そのアルファを独り占めするオメガはベータにとって邪魔な存在でしかなくそれは長い時間を掛けてベータ全ての思想になっていた。 ーーー 「千晴、お前顔色が優れなくないか?」  学舎の帰り道、同級の時成に気付かれ言葉を詰まらせた。体調の悪さに病院に掛かり昨日身体検査の結果が出た。オメガだと……。続けて発情期を迎える準備段階にきているから体の変化に違和感があると記され、それ以上は父も母も俺も読み進めることが出来なかった。 「大丈夫ですよ。少し日が強くて疲れてしまいました」  弱々しく笑う俺に冷たいお茶を買い頬に当てる。 「これを。千晴は直ぐに体調を崩すから心配だ」  反対の頬に口付ける時成に応えるように唇を合わせた。  電器店に展示されるテレビでは最近の戦況が優勢にあると伝えている。 「まだ戦争は終わらないのですね」 「この町から出たアルファの八尋様が率いる軍がきっと終わらせるさ」  アルファとオメガの番に男女の区別がない為、ベータ間でも同性での恋愛は少なくない。闘いばかりを好むヒトが増えることを目に見えぬ誰かが望まれていないような世界だ。 「自由に世界を見てまわりたいですね」 「海の向こうには獣人と呼ばれる者が住む国もあるみたいだね。本にはとても友好的だと書いてあったよ」  時成とはいつも本の話をしたり将来を夢見たりと気があった。端整な顔だち優しい性格に恋に落ちる事に時間は掛からなかった。 「千晴の笑顔はとても綺麗だ。共に旅に出ればキラキラと美しい笑顔がずっと見られそうだな」  とても愛しい貴方は俺がオメガだと知れば嫌いますか?  テレビに軍司令官アルファの番のオメガがちらりと映る。 「見た目だけで軍司令官の寵愛を受ける、子を成す道具に心を操られるなんてアルファにとってオメガは唯一最大の汚点だな」  それは誰もが思う事実 。
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