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「グオオオオッ!」 「やめてえええええ!」  咆哮を上げながら鬼が襲いかかってくる。後ろでポンコツが頭を抱えながら喚いているが、もう放っておこう。 「……」  俺は"余りにも遅すぎる"鬼の拳撃を見つめる。  己より何倍も大きい剛拳を、そっと人差し指で受け止めた。 「……ナ」  まさか人間の俺に止められると思っていなかったのか、鬼の表情が驚愕に染まる。 「私美味しくないですぅうう!」  魔物の実力を測る為敢えて受け止めたが、思った通りこんなもんかと納得する。  ほんの一瞬、攻撃をわざと躱してセレナを亡き者にしようかと考えたのは秘密だ。  もう鬼に用は無い、後ろにいるポンコツがうるさいのでご退場願おうか。 「じゃあな」 「グアッ!?」  人差し指で拳を受け止めたまま、中指を親指で力をためデコピンを放つ。轟音が唸り、鬼が遥か彼方まで吹っ飛んでゆく。  どこまで飛んだのかは分からないが、恐らく死んではいないだろう。あいつ丈夫そうだし。 「あれ、私まだ生きてる……ブラックオーガ様はどこに?」 「俺が吹っ飛ばした」 「……」 「……」 「もうやだぁー平太さんのう・そ・つ・き。私はちゃんと信じてましたよぉ、平太さんが負ける訳無いぃぃぃだだだいですううごめんなさいぃぃいい!!!」  ああ、また我を忘れてしまった。
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