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◇ 「通行手形が無い?じゃあしょうがねえ、通りたきゃ金貨一枚出しな。え、無一文?話にならねえ、とっとと消えな」 「「……」」  途中、魔物に襲われるというアクシデントが起きたが、何事も無く事態を解決した俺とセレナは、どうにかこうにかベルン王国に到着した。  だが、ここでまた新たに問題が発生してしまう。  入国しようとしたら、いかつい顔の門兵に止められ通行手形とやらを出せと告げられたのだ。  因みに、初めての異世界人との会話だったが何故か言葉が通じた。というか日本語だった。何故なのかは分からん、余り気にしない事にした。  勿論異世界に手ぶらで来たばかりの俺が通行手形なんて持っている訳が無い。セレナに顔を向ければ、ブンブンと首を横に振っている。  マジかー。  通行手形が無ければ金貨一枚で発行出来るらしいが、俺達は金貨どころか無一文の貧乏人。当然入国出来ず、門前払いをされてしまった。 「……どうするんだよ」 「ふええええええん、どうするんですかぁ!私お腹すきましたぁ、もう一歩も歩けないですぅ」  力尽きたようにぺたんと座り込み、泣きべそをかくセレナ。 「……」  小さくため息を吐いた。  邪神とか魔王を倒しに異世界に転移したはずなのに、余りにも前途多難過ぎる。これじゃあ邪神に辿り着く前に冗談じゃなく野垂れ死んでしまう。  それもこれも、全部このポンコツ女神のせいなんだが、言って責め立てても男として情けないので、不満は胸の内にしまっておく。  とりあえず、現状を打破しなければ何も始まらない。  というか死ぬ、切実に。
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