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「あのお客様、いつまでもそこに居られるのは他のお客様にご迷惑なのですが」
異世界に来て一日も経っていないのにホームシックになっている俺と意気消沈しているセレナに、うさ耳受付嬢が無慈悲な声をかけてくる。
彼女にしてみたら俺達はただの営業妨害だよな。
でもすいません、動きたくても足に力が入らないんです。心が辛いんです。
「おいおい何だぁ!こんな所に見覚えの無えガキがいると思ったら文無しかよ!」
何だこいつ、いきなり現れたぞ。こっちは喋る気力すらないんだから、頼むから絡まないでくれ。
「兄ちゃんよぉ、連れの女をこのジャッカル様に寄こすなら、登録料を代わりに払ってやってもいいぜ」
「え!?マジ!?」
「……お、おう」
彼の申し出に喰いつく。
話しかけてくんなよと内心で愚痴っていたが、今ではあなたが神だ。
「おい、また新人に絡んでるぞ」
「あいつ、最近上級に上がったからって調子に乗ってるよな」
「ほっとけ、関わるだけ労力の無駄だ」
周りにいる冒険者達が小声で彼を貶している。そこで俺は、改めて彼を観察した。
自分をジャッカルと名乗った人物は、二足歩行の犬獣人。いわゆるワーウルフという種族だった。
頑強な鎧を身に纏い、中国の青竜刀に似た巨大な剣を背負っている。
その姿は、歴戦の戦士の風格だった。
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