3/5
前へ
/594ページ
次へ
「あのお客様、いつまでもそこに居られるのは他のお客様にご迷惑なのですが」  異世界に来て一日も経っていないのにホームシックになっている俺と意気消沈しているセレナに、うさ耳受付嬢が無慈悲な声をかけてくる。  彼女にしてみたら俺達はただの営業妨害だよな。  でもすいません、動きたくても足に力が入らないんです。心が辛いんです。 「おいおい何だぁ!こんな所に見覚えの無えガキがいると思ったら文無しかよ!」  何だこいつ、いきなり現れたぞ。こっちは喋る気力すらないんだから、頼むから絡まないでくれ。 「兄ちゃんよぉ、連れの女をこのジャッカル様に寄こすなら、登録料を代わりに払ってやってもいいぜ」 「え!?マジ!?」 「……お、おう」  彼の申し出に喰いつく。   話しかけてくんなよと内心で愚痴っていたが、今ではあなたが神だ。 「おい、また新人に絡んでるぞ」 「あいつ、最近上級に上がったからって調子に乗ってるよな」 「ほっとけ、関わるだけ労力の無駄だ」  周りにいる冒険者達が小声で彼を貶している。そこで俺は、改めて彼を観察した。  自分をジャッカルと名乗った人物は、二足歩行の犬獣人。いわゆるワーウルフという種族だった。  頑強な鎧を身に纏い、中国の青竜刀に似た巨大な剣を背負っている。  その姿は、歴戦の戦士の風格だった。
/594ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3401人が本棚に入れています
本棚に追加