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「あんな魔物見た事も聞いたことも無いわよ……っていうか魔物なの?」
「あれを倒せるの?」
「海の主、海竜ダイダロス。滅多に現れない、特級の魔物ね。自分の領域を荒らされて怒ったのかしら」
へー、あのウツボって竜だったんだ。
「強いの?」
「強いわ。ダイダロスに会った不幸な船は軒並み沈むっていう逸話があるし」
「勝てそう?」
「勿論……ってカッコよく返したい所だけど、陸だったら兎も角、海だと分が悪いわ。ちょっと手こずるかも」
「えっ!?」
「……」
学園長さんでも厄介な魔物だと聞いて驚愕する二人。そりゃそうか、学園長さんが手こずる魔物に自分達が勝てる訳ないし、彼女が負けたら死んじまうもんな。
……よし。
「じゃあ次は俺の出番だな」
「「えっ!?」」
「……やれるのかしら? 貴方が勇者なのは分かるけど、死んでも責任取れないわよ」
彼女の疑問に、俺はヒラヒラと手を振って、
「余裕余裕、ワンパンでぶっ飛ばしてくるよ。これから鍛えるこいつ等に、少しぐらい威厳を見せとかないとな」
気楽な言葉を返して、デッキの手摺りの上に登る。
「ヘイタさん、危険ですよ!」
「アンタ落ちるわよ! 早くそこから降りなさい!」
「……」
心配してくれる二人を無視して、俺は足裏に力を溜め込み、一気に解放する。
ドンッと衝撃と共に手摺りが破壊され、俺の身体は空へと駆け上がった。
そして――、
「よぉ、ブッサイクな顔してんなぁお前」
「キュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
「悪いけど、今回は遊んでる暇はねぇ」
お前と戯れるより、あいつ等をシゴク方がずっと楽しそうだからな。
だから――吹っ飛べ。
「星皇拳――"羅喉"」
「ギュオオオオオオオオオオッ!」
俺が放った羅喉と、ダイダロスの口腔から発射された水のブレスが激突する。
が、一瞬の拮抗すらなく。
水のブレスは掻き消され、羅喉を喰らった海竜は遥か彼方まで吹っ飛んでいった。
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