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 平太の話しに、カタリナは彼の横顔を見つめながら思考を巡らす。  この男は、平太は、どうしてここまで自分達の事を真剣に考えくれるのだろうか、と。  確かに護衛をしてくれとは頼んだ。しかし、言ってみればそこまでの関係に過ぎない。それ以上のことをしてくれても、何の見返りもないはず。  なのにこの冴えない少年は、自分達が強くなるよう無償で面倒を見てくれるのだ。 (それにヘイタって、こんな風に時々真面目になるのよね)  まだほんの少ししか同じ時を過ごしてないが、カタリナは平太の人間性を大体把握している。  普段はアホでスケベな事ばかりしているのに、ふとした時に今のように真剣な顔が出る。  その表情で話す時は、カタリナ達は何も言い返すことが出来ないでいる。まるで、我儘を言う子供を諭す大人のように。  そしてそのギャップが、多少なりとも乙女心を揺らしているのだが、本人は気づいていない。  不思議な少年だ、とカタリナは思った。  邪神を倒す為に、女神(まだセレナを本物の女神だと信じていない)によって異世界に呼ばれた勇者で、既に三体の魔王を討伐しているという。  初めて聞いた時は「何を馬鹿な事を」と鼻で笑ったが、海竜ダイダロスを一撃で追い払った光景を目にしたら、もう信じるしかないだろう。  隣にいるこの少年が、正真正銘勇者であると。 (はぁ、こんなのに私達の未来を託すなんてね。まっ……いいか、こいつなら)  胸中でため息を吐きながらも、平太になら己の命を託しても悪くないと思ったのだった。
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