献血

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献血

 子供の頃、かなり大規模な交通事故に遭った。  大量出血をして危篤状態だった俺は、たまたま運びこまれた病院近くに赤十字センターがあったため、大量の輸血が間に合い、命を取り留めることができた。  その経験から、自分の体調と向き合って、可能な時は頻繁に献血をしている。  俺も誰かの血で救われたから、俺の血が誰かのためになるといい。  そんな気持ちで、今日も近所の献血ルームに向かった。  家から一番近い位置にある献血ルームでは、俺はトップクラスの常連で、施設の人はみんな顔見知りばかり。献血をする理由から、ちゃんと体調を自己管理していることも承知してくれているので、今更細かな説明はない。  すぐに献血が可能か。もし混んでいるなら待ちましょうかと、そんな話を受付の人としている時、ふと、受付カウンターの隅の方に女の子がいるのが見えた。  幼稚園児くらいの女の子が、ぽつんと受付脇に立っている。  とのくらいの子が自分だけでこんな場所に来る訳がない。となると、親と来て待たされている子だろうか。だとしても、子供は『献血』=『注射をすること』と聞くと、それだけで震え上がるのがたいていだから、おとなしく待っていられるなんてたいしたものだ。  珍しいなと見ていた俺に気づいたのか、ふいに女の子が振り返った。  とことことこっちへ寄って来る。 「お兄ちゃん、血を採りに来た人?」
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