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「では、しっかりと御子をお支えするのだぞ。息災であれ」
サクヤヒメとイワナガヒメはオオヤマツミに深々と頭を下げ、何人かの御供と共に沢山の贈り物を携えて旅立ちました。
サクヤヒメ達が通る道は、鳥が歌い、花が咲き乱れ、やわらかな風が肌を撫でていきました。希望に満ち溢れた旅に、サクヤヒメの胸は踊りました。はじめは戸惑ったこの胸の痛みも、いつの日か心地よい高鳴りであると気付く事ができたのです。
「ねぇ姉様、あのお方は私たちを見たら何と言うのでしょう?驚くでしょうか?それとも喜ぶでしょうか?」
だってそうでしょう?と笑いながら舞うサクヤヒメは本当に嬉しくてどうしようもない、という様子でした
「あのお方は、私たち二人分の幸せを手にするのです。必ずや喜んでくれるに違いありません」
サクヤヒメは、道端に咲く白い花を一輪摘むと、その花をイワナガヒメの髪に差しました。
「サクヤヒメ、あなたは本当に美しい娘です。わたくしはあなたの姉である事を心から嬉しく思っていますよ」
だからこそ、とその手をそっと取ると、イワナガヒメは優しく微笑みました。
「この先、どんな事が起きようと、何が起きようと、たとえ別つときが来ても、私はいつどこにいても、あなたの事を想いましょう。あなたの幸せと繁栄を、未来永劫願いましょう。忘れてはなりませぬよ。これは約束ですよ」
その言葉にサクヤヒメはただただ嬉しくなりました。なぜなら、その思いはサクヤヒメも同じだったからです。
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