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「あなた様がどこのどなたかは存じませぬが、人に名を訊ねるならば、まずご自分から名乗るのが礼儀でございましょう」
振り返ると、先ほどの娘がその大きな瞳で怒ったように見つめていました。しかしその姿すら美しく、愛らしい。それまでニニギを取り巻いていた怒りは、またしてもどこかへ吹き飛んでしまいました
「確かにそなたの申す通りである。無礼はこちらであった。私の名は、ニニギ。天照大御神様の孫にあたる」
このニニギノミコトの潔さに娘は少しだけ心を開きました。自らの過ちを認められる者に悪い者はいないと父に教わってきたからです
「左様でございましたか。畏れ多くも天つ神であられる大御神様の御子様とは露知らず、どうか、ご無礼をお許しください。わたくしの名は、コノハナノサクヤヒメと申します」
それまでとはうって変わって、娘はニニギに微笑みかけました
「コノハナノ…サクヤヒメ…なんと美しい名だ」
まるで脳天に雷が降ったように、ニニギの心はサクヤヒメに射ぬかれてしまいました
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