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二人が出会ったその日ですら、ニニギはもう、心から溢れ出す気持ちを押さえることが出来なくなっていました
「サクヤヒメ。私はもう、そなた以外に何も見ることができぬ。空も雲も、海も山も、私が美しいと思ってきた全てのものが、そなたの前では霞んでしまうのだ。そなたはその名の通り、花が咲くほどに美しい。どうか、私の妻となってはくれぬか」
その真っ直ぐに見つめられた瞳と、自分に対する心を包み隠さず打ち明けたニニギの姿に、サクヤヒメの顔は夕日のように染まっていきました
「今すぐに…というわけにはいきませぬ。どうか一度、父に相談させてくださいませ」
それだけ言うと、サクヤヒメは逃げるようにして岬を離れました。
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