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それからほどなくして、落ち着きを取り戻したサクヤヒメは今日あった事全てをイワナガヒメに話しました。どれだけ話の順序が狂おうと、どれだけ要領を得なくとも、イワナガヒメはサクヤヒメの話に耳を傾けていました。
「サクヤヒメ、よくお聞きなさい」
ようやく全てを話し終えたところで、イワナガヒメは立ち上がり、サクヤヒメを背に満点の星空を見上げました。
「それは、恋、というものでしょう」
「恋?」
姉を見上げながら、サクヤヒメは不思議そうに首を傾げました。
「わたくしにもまだわかりませんが、聞いた話によると、恋とは、誰かをお慕いする気持ちだそうです。これまでそんな気持ちが芽生えた事のないあなたが困惑するのも当然でしょう」
「でもわたしは、あの方とは出会ったばかりなのです。恋というものは、それほど突然訪れるものなのでしょうか」
サクヤヒメの胸がまた少し痛みました。あの眼差しが頭から離れず、また顔に熱が帯びていきました。
「ふふっ、あなたが納得しようとしなかろうと、あなたはもうそのお方に恋をしてしまっているのです。いいですか、大事なのは、あなたの気持ちですよ。出会いはきっかけにすぎません。突然だろうと、偶然だろうと、必然だろうと、心を閉じ込めてはいけません。相手の心と向き合うのです。苦しくても、逃げてはいけないのです。あなたと同じ苦しみをその方も味わっているはずですから」
その言葉で、サクヤヒメは心を決めることができました。
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