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「「…………。」」
時計の時を刻む音だけが部屋に響く。まるで時計以外の時間だけが止まったのでは無いかと思うくらい静まり返っていた。
そして沈黙を破ったのは景だった。
「太陽? あんた何言っているんだ。ハロウィンの話をしているんだ。まさか、ボケたんじゃないだろうな」
景は本気で心配する表情でニュイブランシュ卿の顔をのぞき込む。
「私は至って問題ないです。ボケてもないです」
ニュイブランシュ卿は机に両肘をつくと手を組んで景を睨み上げた。
「でもどうして太陽がどうのこうのって言ったんだ?」
景は机に手を付くと不思議そうな表情で尋ねる。
「あなたがハロウィンについて聞いてきたんじゃないですか。それに答えたまでです」
「…………。」
「…………。」
「なあ、ハロウィンっていうのは人間界の一種のイベントのことだぞ?」
景は手を組んだまま固まっているニュイブランシュ卿の肩にそっと手を置いて真実の答えを言った。
「知らない。そんなもの知りませんよ」
ニュイブランシュ卿はフフフッと笑いながら肩を震わせて言った。
景は知らないと言ったら馬鹿にするつもりでいたが、この反応は予想外であったようで慌ててフォローに入る。
「だ、大丈夫だって。ハロウィン知らないのは人間界を知らないあんただから仕方がなく――」
景はそこまで言ったとこで はっとして口を手で抑えた。
「人間界について知らなくて申し訳ないですね。まさか、私の知らないことを質問してその反応を楽しむつもりでいたんですかね。景?」
ニュイブランシュ卿はその紅い目で景を睨む。先程までとはその瞳の奥にある真意が異なると景は察した。
「ま、まっさかー。俺がそんなことする奴なわけないだろー。やだなーハハハハ……」
景は目を泳がせながら机から離れていく。
「なるほど、図星ですか。それで、ハロウィンとやらではどんなことをやるんですか」
ニュイブランシュ卿は本題に戻ろうと言ってそう切り出した。
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