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「どうしてこの服がここに……」
ニュイブランシュ卿は人形に着せてあるる服をそっと触った。
「この服に何か愛着でもあるのか?」
景はニュイブランシュ卿の背後まで歩くと不思議そうに尋ねた。
これは、これは父の愛用していた制服。まさか予備があるとは……。とても懐かしい感じがする。
ニュイブランシュ卿は込み上げる気持ちを抑えて景の方を振り返った。
「あなたにしてはお目が高い。この服はこの国では最高の価値を誇るものです」
そう、私にとって最高の……思い出の品。
「ならそれを着るので決定――」
「ダメです」
景が言い終わるのを待たずにニュイブランシュ卿は強く言った。
「この服はこのままでいいんです。私を含めて誰も着てはいけない……」
ニュイブランシュ卿は珍しく声を強めにしながら言った。
景は何かを察したのかそれ以上は追及してこなかった。
「代わりにこっちを着ますよ」
ニュイブランシュ卿は近くにあった黒のロングコートを取り出した。
「それって普段俺が戦闘の時着ているのに似ているな」
「だからですよ。今回は互いの服装変更ってことで我慢してください」
「へぇー珍しく面白いこと考えるじゃんか。いいよそれで」
景がケラケラと笑いながらそう言うとニュイブランシュ卿は服に袖を通しながら「珍しく」は余計ですと返した。
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