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「それでハロウィンの時はこう言うんだ。Trick or Treatってな」
景は自慢げにそう言った。どこか誇らしげに傲慢に。
「それはどういう意味ですか?」
「英語っていう人間界の言葉なんだけど『お菓子くれなきゃイタズラする』ってことらしいぞ。だからほら、Trick or Treat!」
景はニヤニヤとしながらニュイブランシュ卿の前に手を出す。
ニュイブランシュ卿はその手を一瞥しながらポケットから魔界のお菓子を一つ渡した。
景は少し驚いた様で手のひらに収まるお菓子の袋を眺めている。
「どうしたんですか? お菓子あげたのだからイタズラはやめてくださいね」
ニュイブランシュ卿はしたり顔で景のことを見下す。
「なんでお菓子なんか持っているんだよ。今日がハロウィンだって知らなかったはずだろ!!」
景はニュイブランシュ卿に噛み付く勢いで胸ぐらを掴んだ。
「さっきあなたが言ったじゃないですか。お菓子をあげる日だって。会話をして着替えるほどの時間があればなお菓子の一つくらい調達できますよ」
ニュイブランシュ卿は笑顔でスラスラとそんなことを述べる。
景は悔しそうな顔で胸ぐらを掴む手を緩めた。
「なら私からも言わせてもらいますよ。
えーと、何でしたっけ?trick……」
ニュイブランシュ卿が言いかけたところで景はスッと箱状のものを出した。
「ほら、やるよ」
景が素直に渡したことにニュイブランシュ卿は少なからず疑問を抱いた。
「今日は随分と素直ですね」
「ん、まあ俺から言い始めたことだし多少はな」
景はニヤニヤとしたままそう答えた。
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