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「な、何で外に出てやがったんだ」
バツの悪さを誤魔化すように、タタは訊いた。
「よ、用を足していた。
間に合うと思ったのだ」
合点がいった。
ほとんどの砂船は船嘴(せんし)と呼ばれる船首の一番先の部分の、スノコ状になった床の上に置いた便座をトイレとしている。
もちろん ヌグルース号もそうだ。
要するに砂海に垂れ流しなのだが、船尾側から風を受けることを考えれば、悪臭も汚れも前方に飛んでいくわけで、船も汚れず合理的な方法と言える。
だがここは、船首楼からは丸見えになる。
船員たちにそれを気にする者はいないし、船客も男の場合はそこを使ってもらうことになっていたが、女性客の場合は、船尾楼についているバルコニー部分に便器を用意して使わせていた。
そこは扉こそないが、周囲の視界からは断たれており、個室状になっている
スーシィが、まさか女だとは思わなかったタタが船嘴のトイレを教えていたため、 スーシィーは人気のないタイミングを見計らって用を足していたのだろう。
「間に合わなければ死んでたんだぞ」
現にいま命を落とし掛けたのだ。
何に対する羞恥からかは分からないが、 スーシィは頬を赤く染めて頷いた。
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