帰国

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「だけどさ、よく亜紗妃が語学堪能だって見破ったよね」 乾杯の時に飲んでいたビールは、すでに3杯目のイモ焼酎へと移行している葉子が、残ったお酒を飲み切りながら問いかけて来る。 「そうなんだよね。 履歴書にも生まれがアメリカって言うことしか書いてなかったんだけどな・・・」 アメリカを拠点として仕事をする父の都合上、わたしは15歳まではアメリカをあちこち渡り歩いていた。 ウェディングドレスを作りたいって言う夢も、当初は向こうで叶えるつもりでいたんだけど。 14歳のときに亡くなった母方のお祖父さんの葬儀で帰国した時に、ショーウィンドウに並んだウェディングドレスを見た瞬間、この会社に入りたいって思っちゃったんだ。 だから両親を説得して、兄がこっちですでに就職していた好都合もあって高校から日本の学校に通うことができた。 お祖父さんが亡くなって空き家になった家に、兄と一緒に暮らすことを条件だったけど、この時の兄は、彼女の所に入り浸りだったからいないも同じ存在だったし。 お互い、お目付け役の両親がいないことをいい事にやりたい放題。 今だから言える・・・・・いや、今でも言えないな・・・・・あんな事もこんな事も。
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