帰国

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「そうだ!その事もあったじゃん。あのデザイン泥棒って結局犯人はわかったの?」 やっとで1杯目のビールが無くなった小牧。 次をどうしようかメニュー表を見ながら聞いてくる。 「デザインした人って言うのは、名前はわかってるけど、まだ会ってないからわからない」 自分の飲んでいたビールも飲み切ったから、小牧のメニュー表をのぞき見して 「次、甘いのにしようっかな?」 開いていたページが、小牧お薦めのカラフルなカクテルの写真が載ったところだった。 「ちょっと注文してくるね」 小回りの利く小柄な小牧は、チョコマカとよく動いてくれるから助かる・・・・。 って、自分がデカ過ぎるだけなんだけどね。 「ぶっちゃけ、どうすんの?」 丸テーブルで、等間隔で座っていた所からわたしに向かって葉子の声が伸びてきた。 「どうするって?あ、ありがとう」 帰ってきた小牧が、ちょうど出来上がった料理も持って来てくれた。 「犯人は、とりあえずまだ会社に在籍しているんでしょう?」 同じく、小牧から料理を受け取りながらさらに追及してくる葉子に 「名簿を見させてもらったけど、企画課デザイン部って言う所に思い当たる名前が残ってたから、まだ退職はしてないみたい」 「ふっふっふ~。楽しみだね。明日辺り乗り込む?」 いつまでも若い頃のまんまに喋る小牧ちゃん。ナリは小さくても気は大きいヤンチャ娘。 「乗り込まないよ。今更どうしようとも思ってないし。ここまであの人の名前で広がっちゃえば、今わたしが名乗ったって、こっちが不審者や手柄泥棒扱いされちゃうだろうし・・・・」
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