3年前

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「ごゆっくりとどうぞ~」 注文のコーヒーを片手に戻って来たショップの店員に差し出されて、トレーごと店奥へと向かった。 お昼を過ぎたこの時間では、人も疎らでどこでも自由に座れそうだ。 チラッと店内をぐるりと見まわす。 店の真ん中はゆっくりと落ち着けないから、真っ先に却下。 窓辺は女子高生らしき塊が喧しくしていることから、同じく却下。 残るは店の奥。 こちらの方は、希望だった壁際の席はひとりの女性に陣取られていてしまっている。 仕方なしに、その女性の席から一つ分空けた次の席にコーヒーが載ったトレーを置いた。 壁際に据えられた長いソファーに腰掛け、バッグの中からスケッチブック数冊を取り出しテーブルの上に乗せた。 何枚もブックから破いてしまっていて、ただ挟んであるだけのものは乱雑に扱われてぐしゃっとしちゃっている。 ここのところ、自分が思うデザインが描けずにいる自分の姿そのまんまだ。 俺の頭の中も、このぐしゃぐしゃにされてしまった紙と同じ・・・・・・ ---・・・っふ~。 ---とりあえず、いくつかのデザインは出さないと・・・・・ すでに期限はとうに過ぎ去っているが、自分が思うものが描けないからと提出を待ってもらっている。 そろそろ、課長からの催促の言葉も言葉尻が荒くなりつつあるのを自覚している。 ---そうは言ってもなぁ・・・・・ 憧れていた世界とは言え、現実はそう甘くはいかないって事を実感している。 覚悟を決めて今の会社に入って来たけど、ここまで自分が通用しないとは・・・・・
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