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あの時のスケッチブックを返してもらい、改めて全部のデザインに目を通すと俺が目指していたモノがカラフルな色がついた形で写し出されていた。
どこの誰とも知らない。
俺の名前で生み出されたと公表されていたって、自分のデザインだと名乗り出てくることもなかった。
いつ彼女が名乗り出て来るかと、そればかりに怯えた毎日だった。
そんな俺の感情なんてまるっきり無視されて、会社では次の作品をとせっつかれ始め、
俺が集中できるようにと個室まで用意され、挙句にアシスタントまで就くまでの好待遇にも恵まれてしまった。
榎田主任ほか、社の連中はスケッチブックの他のデザインも制作に乗り気だったが、俺がそれだけは阻止した。
これ以上、ひとのモノで脚光を浴びたって、自分が惨めなだけだ。
自分の実力で脚光を浴びたい。
そう思って、次々とデザインを生み出すが、それが形になって売りに出されても、彼女が生み出したデザインで作られたウェディングドレスほどには評価は受けなかった。
それが自分の実力なんだと、まざまざと見せつけられた。
俺の実力で勝ち取った今の地位じゃない。
俺の生み出すデザインでも、すでに脚色された俺の名前で服は売れる。
でも、評価は低いままだ。
会社とすれば、売れるだけで充分だった。
俺の評価なんて二の次だ。金にさえなればそれだけで満足なんだから・・・・・・
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