3年前

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買ったコーヒーがだいぶ冷め切ってしまった頃、無茶苦茶に描きなぐっていたスケッチブックから顔を上にあげると 壁際にいた女性も、俺と同じようにスケッチブックになにかを描いているのに気がついた。 俺とは違うのは、色を使ったデザインらしい。 テーブルの上に、筆入れから全部取り出されている色鉛筆が何本も見える。 この女性も、自分の世界に入り込んでいるのか、俺がじっと見ていても気がついていない。 ---俺の同業者かな? 自分の席からは、彼女が何を描いているのかは見えないが ドレスらしき輪郭だけは何となくわかった。 ちょうど、窓から差し込む光が邪魔して、彼女が座る店の奥まで差し込み反射してしまっている。 ---少しでもいいから見たい。 いつもの俺だったら、他人のプライベートに首を突っ込むことなんて皆無なのに、この時ばかりは焦りがあったのかもしれない。 そんな欲求がむくむくと湧いてきてしまっていた。 彼女の席に一つの影が落ちた。 待ち合わせていた知り合いが到着したのだろう。 自分の世界に入り込んでいる様子の彼女の事も慣れっこなのか、肩をそっと叩いて自分の存在を伝えているようだ。 「お待たせ。悪いな・・・・・・」 チラッと見た感じ、彼女よりも俺よりも年上そうな男の人だが、なんだか挙動不審な態度が気になった。 「ホント、遅かったわね」 肩を叩かれたって、相手がだれかって言うのがわかっていたのか顔を上げる事もなく嫌味を一つぶちかましている彼女の態度にびっくりしてしまった。
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