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◇
強風が吹き荒れる平地。嵐の中心には南北に高い塔があるルネーシャ城がある。
少し離れた場所は穏やかだというのに、ここだけが目もまともに開けていられない程だ。
城の上空には緑色の竜が一頭旋回している。
「あのウインドドラゴンは、かつてナーレ市が推戴していた守護竜に違いない」
真っ黒な馬、コシュタ・バワーの手綱を右手で握りながら、首なしの騎士デュラハンが緑竜の名を口にする。
「これもなんだ。幻影を作り出してる術者、何者なんだろね」
死霊と馬を並べて走る女性、アンジェリナがしっかりと姿を覚えておこうと空を見上げる。
偶像の産物と解っていても、やはり目を奪われるものだ。
白地に青の服に部分鎧をつけている。肩下くらいまである髪を雑に後ろで纏めただけ。
聖堂騎士に色気は不要とはいっても、やはり二十代後半の適齢期女性としては、最低限のたしなみはあって欲しい。
一般論はそうだとしても、彼女の隣を走るアレックスが「アンジェリナはそのままで素敵ですよ」などと言うから始末が悪い。
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