竜と希望と恋心

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「姿を現せ! 我はエンシェントドラゴンだ!」  輝く槍をものともせずに散らばる騎兵を闇雲に追いかける。  銀の鱗が次々剥がれ落ちる、それでもヘンリエッタは構わず何かを探し回った。 「主に仇なす者を討て!」  デュラハンが魔獣を突撃させ戦闘法官と戦いを始めた。  三方入り乱れて戦が起こる。ファティマ連邦は何が起きているか俄かに把握出来ない。  黒騎兵が一騎止まると死竜に正面を向ける。  一際大きな馬、立派な体躯の騎兵、一般の兵ではないのは誰にでもわかった。 「我はここに居る!」  重低音の声を大音量で発する。混乱している戦場の遠くにまで響いた。  長い首を振り向け死竜が黒騎兵を見る、牙を剥きだしにして眼前にドシンと降り立つ。  大きく咆哮を上げる。エンシェントドラゴンを目の前にして怖じない者を舐めるように見た。 「操り人形がふざけるな!」  鋭い牙で黒騎兵に噛みつく。すると鎧が音をたててバラバラに崩れ落ちた。  中身は空洞、誰も入っていない。  ゴーレムの類なのだろう、それにしては精巧な動きだったが。
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