118人が本棚に入れています
本棚に追加
/170ページ
四分割の左上、第一クォーターには盾に交差する剣。右上第二クォーターには、ファティマ白百合。
左下第三クォーターには、斜めに刺さるようなギザギザの刺繍。右下第四クォーターには、黒百合。
それらを兼ね備えた人物を知る者は居ない。紋章官に視線が集まるが、彼も冷や汗を垂らすだけで回答に困窮する。
玉座の手前にまで行くと、膝をつくわけでもなく段上の王を見上げた。
「御身の前に」
「無礼な! 陛下の御前にあって礼を欠くとは!」
大臣が許されない態度だと唾を飛ばす。だが黒衣の国家元帥は耳を貸しすらしない。
「戦時だ、不拝不礼は武官に許された権利、行使して何が無礼だ!」
先ほどから言い争いをしていたロングス将軍が、文句をつけた大臣に正論を吐いた。
スカーフェ国家元帥にたしなめられ、国王の言葉を待つ。
「余はこの者に国の行く末を委ねる。皆、心して従え」
その宣言を受けて、段上に在ったスカーフェ国家元帥が階段を下る。
代わりに黒衣の国家元帥がゆっくりと登った。そんな馬鹿なことがあるかと皆が疑いの目で見る。
最初のコメントを投稿しよう!