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◇
「ねぇ、これって被ったらどうなるのかなぁ?」
黒の馬に乗っている白い短衣に水色の外套をつけた栗色の髪の少女が、黒の兜を両手で抱えて疑問を発する。
馬は二人乗り、少女の背には黒鎧に黒衣の首なしの騎士であるデュラハンが同乗していた。
普段は絶対に左脇に抱えている自らの兜首を渡してしまっている。奇妙な光景だ。
「そのようなことを試した者はおりません。試そうとした者もです」
何とも恐ろしいことを思い付いたものだ。デュラハンに寄りかかり、「どーしよっかなー」などと呟いている。
三騎が少し後ろから二人の姿を見て驚いていた。
「仲良いよねあの二人、ね?」
「そうですね。あれが魔界でも一角の評価を得ているデュラハンとは、解らないものです」
笑顔で言葉を交わす男女、もう一人は冴えない表情だ。
「俄には信じられませんの。けれども確かにあの方が――」
昨日の今頃は全くこうなるなど考えもしなかった。
五百年を生きる守護竜ですら、予想すらしなかった事件。
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