118人が本棚に入れています
本棚に追加
/170ページ
「我が名はマッケンジー。ファティマ連盟国家元帥・トライ伯爵」
低い声で彼は言ったファティマ連邦ではなく、ファティマ連盟と。
遠い昔に名を変えたはずなのに。そしてもう一つ、壊滅した都市であるトライ伯爵とも。
「陛下、お戯れが過ぎます。今は大事な時であればこのような悪ふざけはお止めくださいませ」
誰しもが不快だった。国王は気が触れたかとすら思ってしまった。
「代々伝わってきた話はこれだ。盟約破られし時、国家元帥が帰還するだろう。その者、国家の英雄であり、人類の希望である」
目が曇っているわけではない、操られている形跡もない。
国王が真実そう信じ、認めている。皆がもう一度段上の国家元帥を見た。
それを聞いて紋章官が答えに気付いた。
「あの紋章はトライ伯爵家のもので御座います」
第三クォーターのギザギザが、稲妻を表していることをようやく思い出す。
そうだとしても事態を飲み込めなどしない。五年、十年前の話ではないのだ。
「証をたてて見せよう」
マッケンジー国家元帥はたったそれだけ言葉を残し、段上から下ると外へ出ていってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!