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「それに……打ち込む時に右肩が下がる癖、直っておらぬようだな」
デスマカヴルが解除される。落ちてきた兜首を左腕で受け止めると、デュラハンに信じられないような感覚が駆け巡った。
「ま、まさか、いやそんなはずは……」
構えたグレートソードの切っ先が震える、明らかな異変に皆が気づく。
「デュラハンよ、何をしておるか!」
ヘンリエッタが吠える。主がすぐ傍で見ているのだ、醜態を晒している場合ではない。
「俺は義理と忠誠を選ばねばならぬのか?」
前に少年に迫られた一言が頭に蘇る。騎士にとって忠誠は絶対だ、主の為に全てを捧げると誓っている。
だが果たせぬまま朽ちた己がずっと抱えていた義理と悔恨に苦悩する。
「俺は……」
黒騎兵が剣を構えたまま身動き出来ないデュラハンのすぐ傍にまで歩み寄る。
肩と肩が触れ合うほど寄ると「ヒンメル君、自らの信じる道を行きなさい」微かにしか聞き取れないような小さな声で囁いた。
いかつい黒鎧をまとう巨躯から発される声ではなく、華奢であまりにも懐かしい声でだ。
「デュラハン!」
主であるヘンリエッタが再度吠える。
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