君と私の道中劇

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◇  ルネーシャから東回りで目的地に行くには、ゼノビア領を通過する必要があったので「南周りにしましょ」ということになった。  自由気ままな人物のようで、ゼノビアの遠征軍を追い払った後にあっさりと暫く戻らないと告げて城を離れてしまった。  逆転の勝利を収め、さてこれからどうするといったところで姿がない。  無責任を絵に描いたような困ったちゃんだった。 「ところでフラさん、何であんな巨漢に化けてたの?」  黒衣の騎兵、声や体格を偽っていたことについてアンジェリナが指摘する。  デュラハンが御する馬の前に乗り、兜首を両手で抱いたまま振り向く。 「だって普通のあたしを見られたら後々めんどいじゃない」 「そ、そうなんだ……」  深い理由があったわけではなかった。未だに事実をすんなりと受け入れるには抵抗がある。  意外と男性陣は気にしてない様子ではあるが。 「それで私たちはどこに向かっているのでしょう?」  先頭を行く黒い馬に乗った二人に訊ねる。ファティマ連邦領内ではあるが、寂しい道を歩いている。 「ん、どこ向かってるのかしら?」  抱えていた兜首をくるりと回して目の前に持ってくる。
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