君と私の道中劇

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「……それを俺に聞くか?」  デュラハンが呆れながら言葉を返す。彼とて大雑把に南と言われて馬首を向けているだけなのだ。  更に踏み込むならば、ヘンリエッタが竜になり皆を乗せて飛べば数時間で解決する。 「ことあるごとにヒンメル君に絡んでくつもりよ?」  後ろでアレックスが小さく笑った。やはり魔族であっても人と解りあえるものだと。  今でも充分目立つ。一応魔獣は離れて行動させていたが、何せ目立つ。  馬車でなく四騎が固まっていたら当たり前だ。デュラハンが致命的という話はどこにいったやら。 「ワタクシは急いでいただきたいのですけれども」  もどかしくて仕方ないのだ。今すぐにでも戻り、魔王カーマインに会いたい。  嘘偽ることがない気持ちだ。それは皆が知っている。 「焦らない焦らない、エッタが一人で帰っても仕方無いでしょ?」  主導権は完全に奪われていた。機嫌を損ねては全てが台無しになってしまう。  何とも返答できずに引き下がる。少し意地悪な言い方ではあるが。 「月の満ち欠けや日取りの兼ね合いもあるわ。それまでクリプトドラゴンが要塞に居ない方がイレギュラーは少ないの」
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