君と私の道中劇

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「あたしはね、デュラハンになる前のヒンメル君を知ってる。あの時の笑顔を覚えてる、だから肩肘はることなんてないのよ――」  ステッペンウルフ初代団長ヒンメル。団が結成されたのはリーフがまだ村であった時代。  七百年もの過去だ。今やリーフは聖マリーベル教の総本山がある都市に成長した。 「フラウさん……」  彼を知る唯一、彼女を知る唯一。魔族であるデュラハンにベッタリであっても何がおかしいだろうか。 「アンジーちょいこっち」 「ん、何?」  手招きして馬を寄せる。するとひょいと飛び移った。 「あっ!」  急にそうされて馬の制御に一苦労。アンジェリナの後ろに立つと、兜首を放る。 「ほら、がんば!」 「俺の頭を投げないで貰えますか?」  器用に左腕でキャッチすると定位置に抱える。アレックスと共に微笑を浮かべると、ヘンリエッタから距離を置くために少し馬足を速めた。 「ね、アンジー」 「なにかな?」  肩に手を置いて立ったまま耳元で囁く。 「アルとはどうなのよ」 「ちょ、それは、別にまだ何も……」
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