君と私の道中劇

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 言葉を濁してはみるものの逃げ場などあるわけもなく。 「じゃあこれから何かあるんだぁ、ふーん」  にやにやして茶化す。なるほどデュラハンが扱いに困るわけだ、非常に面倒な性格をしている。  黙って馬を歩かせていてもフラの追撃は続いた。 「今なら剣聖もセットでついてくるわよ、まあお得」 「それは……」  困り果ててアレックスに助けを求める。彼はにこにこしたまま何も言わない。 「アルはアンジーをどう思ってるのかなー、かなー」 「私はアンジェリナを世界で一番大切に思っていますよ」  何の躊躇もなくそう応えた。するとアンジェリナの顔がサッと紅くなり、ついには耳までそうなってしまった。 「おー、相思相愛じゃない。うんうん、良かった良かった」  面と向かってそう公言したのはこれが初めて。責任を取ると言ったのはやはり本気だったらしい。 「そういうフラさんはどうなのよ」  つい勢いで言ってしまったが、優しげな笑みを返すだけでフラは答えなかった。  長くを生きてきたのだ、居なかったわけではない。ただ先に逝ってしまったのだけは確かだと気付き「ごめん」小さく謝るのであった。
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