君と私の道中劇

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◇  ファティマ連邦南部、フレイム王国との国境線よりやや北側。  狭隘部があり山脈が南北を分けている地域がある。 「あれってやっぱり戦争中ってやつかな」  遠くに赤い軍隊が見える。赤はフレイム王国軍の装備色で、手前に見える薄い茶色がファティマ軍。  横に長く陣取り国内への侵入を許さない構え、防衛戦だ。 「シドニス国家将軍の軍でしょうね」  南方に出撃しているのは多くの者が知っていた、それがここで敵を防いでいるのだろう。  遠目にしか分からないが薄い茶色の北側、つまりは戦線後方に多くの人間が見える。  装いはまちまちだがやけに人数が居る、野次馬が観戦しているわけでは無い。 「民間人の後方支援といったところだろう。噂に違わぬシドニス国家将軍の人徳か」  近隣住民がこぞって志願して手伝いをしているのだ。  雑役、炊事、荷役、看護、夜間警備、種類を問わず仕事を担う。  フラが襲名された号の今を見て微笑む、志を受け継いでくれているのが嬉しいのだ。 「あたしたちは東の山脈を越えましょう。間道があるのよ、昔の話だけどね」
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