君と私の道中劇

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「ルネーシャでふさぎ込んでいたシドが同僚のフリオに殴られたわ『それでも男か! 行って好きな女を奪い返して来い!』ってね。馬鹿よね、そんなことしたら戦争になるっていうのに」  国同士の関係を良好にするために行う、目的が目的だというのに自らの手でぶち壊しにする。誰が迷惑をするかといえばほぼ全員がだ。  ましてやファティマ連盟は小国、新興勢力だったゼノビア法国よりも低い国力だった。 「フリオ国家将軍ですね、その系譜は途絶えてしまいましたけど、立派な将軍だったと聞き及んでいます」  目を合わせて小さく頷く。元より妻を持つつもりがなかった人物だった。 「ルネーシャ城からフラリン騎士団が数騎で駆けたわ。ゼノビア領に入ったところで追いついて、シドは姫を奪って逃げたの」 「なんかいいな、あたしもそういうのわかるー!」  壮大な駆け落ち、王女と国家将軍の。ファティマもゼノビアも大騒ぎだった、消し掛けた犯人が腕組をして素知らぬ顔をしていたのがやれやれではあったが。 「面子を潰されたとエルベールが軍を率いてやって来たわよ」
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